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2009年08月25日

堂島リバービエンナーレ2009

 大阪で開かれている「堂島リバービエンナーレ2009」に行ってきました。

 第1回目である今回のテーマは、『リフレクション:アートに見る世界の今(Reflection : The World Through Art)』。森美術館館長の南條史生氏がアート・ディレクターを務めたシンガポール・ビエンナーレの出品作品の中から、選りすぐりの26点が来ています。
 
「世界の今」ということで、経済、政治、環境などに関するストレートなメッセージの込められた作品が目立ちました。

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 くわしくは公式ホームページを見ていただいたほうがいいと思いますが、僕の感想を少し。



 もともと、ストレートに政治的な美術や文学が、僕はあまり好きではありません。意見があるならば論理的に述べれば良い。そのための道具としてジャーナリズムがあるじゃないか。美術や文学は、情報や論理では語り得ないことを語るためにあるんだ。そう思っているからです。
 しかし、このビエンナーレには、文句なしに面白い作品がたくさんありました。ド直球の政治的メッセージを含んだ作品(「プロパガンダ」と呼びたくなるものさえあった)を含めて、です。



 僕にとって、もっとも面白かった作品は二つ。



 ひとつは、ディン・Q・リー氏(ベトナム)の「農民とヘリコプター」「ヘリコプター・インスタレーション」という作品。
 ベトナムの農村で、政府や大企業の力を借りず、自分たちの手でヘリコプターを作って飛ばそうとしている人々を題材にしたビデオ・インスタレーションです。
 スクリーンには、ベトナム戦争の記録映像が映し出されます。機銃掃射、ミサイル攻撃、ナパーム爆撃など、米軍ヘリによる苛烈な作戦によって焼き払われてゆく村の様子。そして、お年寄りたちが当時の記憶を語ります。「ヘリが来たら、立ち止まってはいけないんです」「走って逃げても、隠れてもいけない」「普通に歩き続けなければならない」「そうしなければ、銃弾やロケット砲が降ってきます
 しかし、当時幼い子どもだった青年たちは、ヘリコプターに憧れ、平和になった今、独学で技術を研究し、自分たちでヘリコプターを作り出そうとしているのです。

【参照:ヘリコプターを作ったエンジニア、チャン・クオック・ハイさんに関する記事(英語。写真があります)】

「ヘリは災害救助や農業に役立ちますが、高価な欧米製を輸入できるのは金満政治家だけ。私たち農民には高嶺の花です」「欧米人もベトナム人も、同じ人間。私たちが、やればできる優秀な民族であることを、みんなに証明したいのです」

 そしてスクリーンの傍らには、彼らの作ったヘリの現物が置いてあります。トラクターか軽トラックみたいな感じで、「本当に飛ぶのか……?」と思わずにいられませんが、しかしすごい。とにかくすごい。
「ヘリコプターなんて、とんでもない。モラルに反する物です」と、戦争を知るおばあさんが言うのも無理ないけど。

 なんだか「プロジェクトX」を見てるような感じで、現代アートというより完全にドキュメンタリーフィルムとして見てしまいましたが、とにかく印象が強烈で、面白かった。



 もうひとつは、会田誠氏(日本)の「日本に潜伏中のビン・ラディンと名乗る男からのビデオ」という作品。
 会田氏本人がオサマ・ビン・ラディンに扮し、こたつで日本酒を飲みながら、「ワタシ、今、日本に潜伏してマース」「テロリスト、引退しマース」「ワタシ、本当は、いいヒト。小鳥とか、好きね」「日本酒、温泉、最高ね」などと、日本に潜伏しているうちにすっかりヘロヘロのゆるゆるになってしまった様子を演じます。

 スーハ・ショーマン氏(パレスチナ/ヨルダン)の「神の御名において止めよ」のような、民族・宗教問題に真正面から切り込んだ作品も展示されている中、会田氏のこの作品の日本的「ユルさ」は際立っています。シンガポールで大受けして、世界各地で展示されたそうですが、テロ問題がどうこうというよりも、ビン・ラディンという「最も危険」とされる人物をテコにした、日本のユルさに対する一種の批評として受け取られたのでしょうか。あるいは、日本のユルさこそが世界を救うとでもいうのでしょうか

 なんていうか、アート作品というよりも、ネタビデオというか、「あらびき団」みたいなお笑い系の深夜番組でも通用しそうな感じで、僕もけらけら笑いながら見てしまいました。



 いや、もちろん、現代アートはテレビではないわけで。

 たとえばリー・キーボン氏(韓国)の「バチェラー:二重の理論」(水の満たされた水槽の中を、ページを開いた哲学書がクラゲのようにゆらゆらと漂っている)とか、クレア・ランガン氏(アイルランド)の「メタモルフォシス」(人も、家も、家具も、世界の全てが雪と氷に覆われてゆくビデオ作品)のように、クオリティーの高い堂々たる現代アート作品もたくさんありました。そういうのもすごく面白いし、僕の本来の趣味としては、そういうものの方が好きなんですが……。しかしながら、先進諸国の作家の作品ほど、美しく、知的で、悪く言えば「アート優等生」っぽいような感じがしたのも事実です。

 この夏ずっとアートのことばかり気にしていて、「夏バテ」ならぬ「アートバテ」気味の僕にとっては、ちょうどいい薬だったかもしれません。アートって何だ? アートに何ができるんだろう? そんなことも考えてしまいます。サルトルをもじって言えば、「飢えた子どもの前で、アートは有効か」ということになるでしょうか。
 もちろん、この種の問いに答えはありませんけど。

 会期は残り少ないですが、お時間のある方はぜひお越しになってみてください。僕は来年のシンガポール・ビエンナーレに行ってみたくなりました(会期の一部がNAPと重なりそうだけど……)。
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 堂島リバービエンナーレ2009

会期:2009年8月8日(土)-9月6日(日)
会場:堂島リバーフォーラム 大阪市福島区福島1-1-17 
開館時間:11:00-20:00(会期中無休)
入場料:一般 1000円 / 高校・大学生・シニア(60歳以上)700円 / 小・中学生 500円

阪神本線「福島駅」・京阪電鉄中之島線「中之島駅」より徒歩5分/地下鉄四つ橋線「肥後橋駅」・JR東西線「新福島駅」より徒歩8分



中村ケイタロウ
http://home.att.ne.jp/blue/nakamu1973/
posted by 実行委員会 中村ケイタロウ at 21:23| Comment(2) | アートに関する情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

元興寺地蔵会

 8月23日と24日、ならまちの世界遺産・元興寺で、恒例の地蔵会(じぞうえ)が行われました。いわゆる「地蔵盆」の行事です。

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 24日のお昼には、奈良のいろいろな飲食店が出張屋台を出店する「地蔵盆まんぷく供養」がありました。
 夕方になると屋台は閉店し、お坊さんたちによる法要が営まれます。真言律宗のお寺なので、梵語のダラニやマントラが唱えられ、はるかインドやチベットとのつながりを感じさせます。

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 法要の後は、石仏や石塔が並ぶ境内の浮図田(ふとでん)での万燈供養。僕が行った日は風が強く、すぐに火が消えてしまうので、スタッフのみなさんが一生懸命火を点けて回ってらっしゃいました。

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 それぞれの願いや思いが墨書された素焼きの灯明皿に、炎がゆらめきます。そして夏が終わることを知ります。

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 尺八や琴の演奏もあります。涼しい秋の風。

 毎年お邪魔しているのですが、世界遺産の境内で、このような庶民的な情緒溢れる行事が行われていることが何より素晴らしい。元興寺は中世以来、地域の人々の信仰を集めてきたお寺です。境内の収蔵庫には、それを物語る文化財や膨大な民俗史料が保存・展示されています。皇室や藤原氏の庇護のもとで存続してきた東大寺や興福寺のような華々しい大寺とは、また違った価値があります。

 NAP実行委員会のO久保さん(仮名)も、スタッフとして額に汗していらっしゃいましたよ。今年は終わってしまいましたが、来年はどうぞ行ってみて下さい。



中村ケイタロウ
http://home.att.ne.jp/blue/nakamu1973/
posted by 実行委員会 中村ケイタロウ at 19:56| Comment(1) | 奈良について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月23日

奈良で一箱古本市「大門玉手箱」

サトウです。


8月の29日、30日にきたまちの大門市場で一箱古本市が開催されます。


大門玉手箱
日時: 2009年8月29日(土)・30日(日)
    10:00〜17:00頃まで。 

参加「箱主」紹介はこちら。
奈良の古本関係の方やカフェの方が多く参加されるようです。


主催の「ぼちぼち堂」さんは、高畑の南果を会場に開催されたブックイベントで知り合いました。その後押熊のプティ・カフェや高畑のカフェ・リノワ(こちらは行けず…)で期間限定古本屋イベントをされててました。写真を撮られていたので、写真関係の本のセレクトなどが個人的にはヒットでした。


お時間ある方、ぜひのぞいてみてくださいね。


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サトウアヤコ
http://aykt.seesaa.net/

posted by 実行委員会 サトウアヤコ at 09:35| Comment(0) | 奈良について | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

東西公園考

みなさんこんばんは、暑いですね。
今頃の季節は日が落ちる時間も早くなって、夏の終わりを感じます。
ところが昼間はそうでもないように思います。
暑いせいっていうより、特にセミのせいで。
あの声を聞くだけで、体感温度が二度くらい上がる気がするのは私だけでしょうか。

ところで、東京はどこにそんなにセミがいるんだろうかと不思議なのですが、
東京は公園とか、皇居とか、大学とか、神社とか、以外に緑が多いからかもしれません。
都心に行くほど、古い時代のものがぽつんとそのまんま残っていたりします。
周りはビルばっかりなのに、その敷地内だけ鬱蒼としているような所に出くわすと、
タイムスリップした気分になります。

・・・

そういえば、東京の公園は奈良公園とは違う雰囲気があります。
ピクニック、演劇やダンスの練習をする人、ひなたぼっこや昼寝をする人・・・。
公園ならどこにでもあるありふれた風景と思いきや、
奈良公園でそういう姿の人って以外に少ないように思うんですがいかがでしょうか。
東京の公園は芝生が広がり、いかにも憩いの場といった感じです.

木陰で一休み
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ロックンローラーたちの昼下がり
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体力作りはジョギングから
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・・・
このちがい、何だろうって、
奈良公園は国宝・文化財が山のようにわんさかあって、
公園よりもそちらのほうが主役だからかもしれません。

ん?
いや、
ちょっと待てよ・・・。
なんかもう一つ忘れていたものがあるんじゃないっけ?

あ、アイツだ!!
そうそう、奈良につきものといえば、鹿。
彼らがいると、寄ってこられそうで弁当も広げにくいし、
当たりそうでフリスビーなんかも投げにくい。
そうして何より、いちばんの障害はフン!
芝生の上に寝転ぶなんて、御法度。
そのせいか、奈良公園は他の公園と比べて
地べたに座っている人の率が少ない気がします。
そして芝生を歩くときは皆うつむき加減。

私は未だに芝生の上を歩くとき、下を向いて歩くくせが抜けません。


posted by 実行委員会 オオタ at 00:51| Comment(2) | 【連載】 東京だより | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月20日

アート本情報「BRUTUS 浮世絵に聞け!」

BRUTUS (ブルータス) 2009年 9/1号 [雑誌]
BRUTUS (ブルータス) 2009年 9/1号 [雑誌]
マガジンハウス 2009-08-17
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サトウです。
昨日偶然見つけて、表紙のインパクトに即買いしました。

公式サイトの目次

単に浮世絵の紹介にとどまらず、現代アートと対にしている編集がとてもおもしろいです。


おおっと思ったのはこの辺り。(上の目次から部分的に引用)

031 葛飾北斎×寄藤文平 すぐわかる。すごくわかる。
038 歌川広重・歌川国貞×勝又邦彦 パノラマのよろこび。
041 喜多川歌麿×奈良美智 かわいい女と言われたい。
048 雑誌×浮世絵 江戸時代から好きでした。




NAPにも参考になるかも?
ぜひ本屋で探してみてください。



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サトウアヤコ
http://aykt.seesaa.net/
posted by 実行委員会 サトウアヤコ at 23:31| Comment(0) | アートに関する情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

NAPのロゴができました!

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デザインは、オクノブユキさんです。
カラー版のロゴは品と艶があり、またフライヤーなどに使っているモノクロ版は力があり、見るたびにいいなと思います。


先日より、blogのヘッダにロゴを入れました。
合わせて、リンクの色もロゴのグラデーションカラーの中から採り、変更しています。


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サトウアヤコ
posted by 実行委員会 サトウアヤコ at 09:13| Comment(2) | ブログに関して | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

9月6日(日)にNAP公開会議が開催されます

第1回プレイベント NAP公開会議 [ NARAKARART 奈良からアートを発信する意義 ]
詳しくはこちらをご覧下さい。


会場は、近鉄奈良駅から徒歩5分、アートスペース上三条です。


近鉄奈良駅からの行き方です。


・近鉄奈良駅で下車
・ホームより階段(エスカレータ、エレベータ)で西出口へ
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・改札を出て、左手すぐの6番出口へ
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・階段が二手に分かれているので、左手へ
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・階段を上がると若草書店、右手へ
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・日興コーディアル証券の角を左へ やすらぎの道
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・ビブレを通過し、三条通との交差点を直進すると、上三条町へ
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(西川さんより)



・率川(いさがわ)神社の向かいにピンクの看板があります。
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路地を看板に沿って進むと、アートスペース上三条に到着です。
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より大きな地図で アートスペース上三条 を表示
posted by 実行委員会 サトウアヤコ at 02:13| Comment(0) | 奈良アートプロムについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月18日

「ぽこぽこ展2009」machi/さんレポート

先日machi/さんよりご案内いただいた、愛知のぽこぽこ展のレポートが届いています。

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「ぽこぽこ展2009」 愛知県豊川市 7/28 〜8/2

ぽこぽこはイタリア語の「a poco a poco」からとったもの。今回はしょうがいをもったアーティストとプロのアーティストのコラボ展。
主催の荻野佐和子さんのコメントは以前にもブログで紹介していますのでこちらをご覧ください。
http://nara-art-prom.seesaa.net/article/123296689.html

まず奈良から名古屋まで移動、そこから豊川までさらに電車で一時間ほど。豊川に着いて徒歩。
方向音痴の私は会場までの道に迷ったあげく、汗だくだくでなんとか到着。はーーーーー見る前にすでにくたくただーーー。

それなのに、会場に一歩入っただけでざわざわと細胞が騒ぐ。全体が楽しいエネルギーに満ち溢れている感じ。
「これをしている時が楽しい!!」と思える人たちがつくった「これ」=作品たちは、言葉や技術を超えてまるで生き物のようにヨロコビを発している。

会場に入ってすぐの壁にかかっていたひとつの作品を見たとたん、その絵の前から動けなくなった。
その作品は、絵の中に文字があり、文字は「いきききる」と書かれていた。
三つ目の「き」は横線が三本になっている。この字はパソコンでは変換できない字だ。
こういうところに惹かれてしまうんだよなあ。。。。


どの作品も作家の写真とともに展示されているが、それ以上の説明は無し。誰にしょうがいがあるか、誰がプロのアーティストかは何の区別もなく、作品はただ並列な扱いで展示されてる。

私が行った日は最終日。会場内で保護者の方やアーティストが立ったまま輪になって自己紹介やそれぞれの想いを語るという場面に遭遇した。
荻野さんが主催される美術教室に出会うまでの迷い、今回の展覧会でのよろこび、作家の日常、などさまざまなお話がとびかい、なかには涙ぐんで話す方もおられて、なんだかその輪のそばからも動けない。

何なのかなあ。。。。
こんなに制作以外の事は一切混在させないで、ただ「これをする」=「作品をつくる」ことだけに理由もなく集中できるのって 何なのかなあ。。。。作品を見るだけではなく、その過程に考えが及ぶ。
ふだん自分が考えているアートに取り組む意志の力なんかまるで作用しない、何かもっとちがうところから作品がうまれている気がする。。。


輪になった座談会のしめくくり、荻野さんは、「こどもたちと一緒に世界進出をめざします」と握ったこぶしを小さくふりあげた。満面の笑顔で。
そのこぶしは天にむかって高く突き上げたものではなく、ご自身の身体の範囲をすこしはみでる高さだった。
いいよなあ。こういう自然体にあこがれてしまうんだよなあ。。。。

来場者数は900人を突破したとのこと。流れで搬出までお手伝いした後、わたしはその日が初対面だった荻野さんからハグを受けて会場をあとにした。
うれしいおまけのハグだった。

   machi/
posted by 実行委員会 サトウアヤコ at 15:15| Comment(0) | アートに関する情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月17日

越後妻有、その風土と現代アート・イベント

 リーマン・ショックの余波のせいか(違う)、残暑がつづいております。皆さんいかがお過ごしでしょうか。中村ケイタロウです。

 お盆前に、実行委員会のスタッフ四人で、『大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ2009』に行ってきました。

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(北陸道で約8時間のドライブです)

大地の芸術祭」と銘打たれたこのイベント。作品はもちろん、越後妻有という地域に固有の風土もまた、一方の主役と言えるでしょう。

「妻有」というのは、ひとつの村や町の名前ではなく、新潟県十日町市と津南町とを含む、広い範囲を指す地名だそうです。芸術祭の会場は、これら二つの市と町の、約760平方キロメートル。奈良市の2.7倍の面積です。

 妻有の大半は、旧魚沼郡に含まれます。そう、ここはあの「魚沼産コシヒカリ」の産地です。信濃川に沿って、美しい棚田が広がっています。

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(たぶん、コシヒカリ。秋が楽しみですね)

 地形は起伏に富んでいますが、河岸段丘地形のため、意外なほど高いところにも平地が開けています。人里から山に入り、登りきってみると、そこにまた平地があって水田が広がり、人々が暮らしている。そんな地勢です。

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(ザ・グレート河岸段丘ユートピア)

 夏の妻有は、とても美しいところでした。
 緑と水と集落とが調和した景観は、何世紀もかけて作られ、維持されてきたものにちがいありません。会場から会場への移動中も、表情豊かな民家に出会ったり、思いがけない場所に滝を見つけたり、川の流れの激しさに驚かされたり。複雑な地形は旅人を飽きさせません。「桃原郷」という言葉を口にしたくもなります。

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(きれいな花が多いです)

2009_08110276.jpg(神社がかわいい。奈良とは違う建築様式です)

 しかし、冬の妻有は、日本有数の豪雪地帯。地元の方によると、4メートルほど積もることもあるそうです。2006年には記録的な大雪(平成十八年豪雪)に見舞われました。

 なるほど、集落の様子を見ると、全てが冬に備えて設計されているのがよく分かります。厳しい自然との闘いを通じて、この地の人々は独特の生活様式を紡ぎだしてきたのです。

2009_08110269.jpg(トラクターを入れる小屋。とんがっているのは雪に押しつぶされないようにでしょう)

2009_08110162.jpg(古い建物は、二階にドアがあります。はしごは必需品)

2009_08110150.jpg(消火栓にも雪除けの覆いが)
2009_08110381.jpg(屋根の形が特徴的。このお家は、塩田千春さんの作品の展示場になっていました)
2009_08110386.jpg(松代駅前の名店「ラーメン・カプチーノ」の冷やし中華には、山菜がたっぷり。うめーズラよ)

 大雪だけでなく、2004年の中越地震でも、妻有は大きな被害を受けました。美しい田園風景からは想像もできないほど、「桃源郷」の現実は過酷なのです。

 統計によると、十日町市と津南町の人口は、奈良市の約5分の1にあたる約74000人。十年前は約80000人だったそうです。激しい高齢化と、人口減少。集落を歩くと、そこここに廃屋が見られます。ご高齢の皆さんも生き生きとしているけれど、若者の姿は少ないようです。千年以上かけて織り上げてきた地域の文化や生活様式を、どこまでつないでゆけるか。難しいところに来ています。


 そんな山里に、現代アートがやってきた。そのとき何が起こるのか?

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 今日のところは、個々の作家や作品について論じることはせず、全体から受けた印象だけを述べます。あらかじめ申し上げておきますが、これはあくまで門外漢の私見です。だから現代美術に真剣にかかわっていらっしゃる皆さんから見ればご不快かもしれないし、笑止千万かもしれません。しかし――

「風土は芸術よりも強い」ということを、まざまざと感じさせられたのです。

「現実は表現よりも強い」と言い換えてもいいかもしれません。

 何世紀にもわたって、環境との闘争と調和や、労働や、生産や、希望や、死や、創造や、継承の場でありつづけてきた、「地域」のありよう。それは、積み重なった歴史の断面であり、七万の人々にとっての「現実」そのものです。
 その圧倒的な存在感と重みを前にすると、個人の意識の産物に過ぎない「表現」なんて、ほんとうに非力で、小さい。
 率直に言って、今日の現代アートの中には、隔離された無菌室のようなホワイトキューブの中でしか生命を保ち得ないものも少なくないと思います。

 妻有で見ることができる約300点の作品うち、私が目にしたのはほんの一部ですが、「遠くまで見に来た価値があった」と思えたのはやはり、あえてホワイトキューブを飛びだし、妻有の風土と向き合おうとしている作品たちに出会えたからでした。

 「現実は表現よりも強い」ことを知った上で、風土の中に身を置き、土地の文脈を読み取り、人々と対話し、地域に寄り添うアート。地域の魅力を拡大して見せてくれるレンズのようなアート。他の土地に移してしまえば意味が失われてしまうようなアート。妻有の土に根を張ろうとする、アートの種子。東京や大阪では、決して見ることが出来ないアート。

 そんな芸術を、その場所の力を感じながら鑑賞すること。そこにこそ、この「大地の芸術祭」の面白みがあると思います。

 そうでなければ、だれもわざわざ遠い妻有まで足を運んだりしないでしょう。

(皮肉なことに、人口減少によって生み出されたたくさんの廃屋や廃校が、そのような作品群にとって最適な展示の場となっていました)

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では、奈良は?

 奈良は、妻有とは全く違います。奈良市は県庁所在地であり、人口37万の中核市です。日本の歴史的中心の一つとして、1300年の歴史を有する一大観光地です。妻有よりも有利に見えるそれらの条件が、しかし、ややもすれば、風土に根ざした生活といったものを覆い隠してしまうきらいがあるのではないでしょうか?

「奈良はどんな気候ですか?」
「奈良の人々はどんな家に住んでいますか?」
「奈良ではどんなものを食べますか?」

 そういった問いに対して、僕は「えーと、普通ですよ」と答えることしかできません。

 では、奈良でしか見られない現代アート・イベントとは、いったいどのようなものなのでしょうか? 何を見るために、人々はわざわざ奈良に(首都圏や東日本の人々にとっては、妻有よりずっと不便な奈良に)足を運ぶのでしょうか?

 それは最終的には作家のみなさんにかかっているのかもしれません。奈良という地をいかなる表現の場とするか。その景観や風土をどのような形で素材にするか。作り手にしか分からないことでしょう。
 しかし、作家のみなさんが奈良の風土と出会う機会や場所を、実行委サイドから提供することはできると思うのです。

 廃屋や廃校や棚田、集落の森などを生かした妻有での展示を見ると、そう感じます。みなさんいかが思われますでしょうか。


 ご意見やご提案がありましたら、どうぞコメント欄にお寄せください。
posted by 実行委員会 中村ケイタロウ at 10:30| Comment(4) | アートに関する情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月11日

第9回会議が行われました

鈴木さんが9日の記事で紹介してくださっていましたが、
http://nara-art-prom.seesaa.net/article/125357401.html
改めて話し合った内容についてもご紹介します。

去る8月8日、Gallery OUT of PLACEにて
第9回(たぶん)会議が行われました。
参加者は中心になっている実行委員のみなさんで、
10人程度でした。

議題は、主にこの3つです。
・本番イベントの会場について
・9月6日の公開会議の進行打ち合わせ
・今後の予算やプレイベントの方向性について

・・・・

本番イベントまでもうじき一年。
そろそろ会場を決定しなければならない時期が来ています。
メイン会場の候補は奈良学セミナーハウス(予定)。
以前鈴木さんの第二回フライヤー配布ツアーの記事で
紹介されていました。
http://nara-art-prom.seesaa.net/article/123482980.html
ちなみに招待作家は、某恐怖漫画家へのオファーが断られたため、
某ヘタウマ漫画家を候補に検討中です。

グループ展候補会場は、奈良町物語館やならまちセンターなど、
ならまち周辺にある5〜7施設。
施設によって、予約方法や時期が違っていることと予算の関係上、
すべてを借りることは難しいのですが、
実現できると大掛かりな展示ができそうで楽しみです。

そしてもう一つのメインである、コテンバンダン展(各作家の個展)は、
作家さんが懇意にしているお店と交渉して自分で会場を探したり、
地元でない作家さんにはNAPが用意した会場を使ってもらったり。
こちらはカフェ、ギャラリー、空き店舗、公設市場など
立地も業種も多彩な会場を交渉中です。

課題は、メイン会場から他の会場に回ろうというしかけをいかに作れるか。
会場の立地によって、見てもらえる作家さんと
そうでない作家さんが出ないように、
インフォメーションセンターの設置などを検討することになりました。

・・・・

そして、9月6日にあるプレイベント「NAP公開会議vol.1」
http://nara-art-prom.com/info/index.htm
も着々と準備が進んでおります。

アートスペース上三条にて、奈良県立図書情報館の乾聰一郎氏が
NAPを語ります。
定員は50名ですが、お早めに予約を!!

・・・・

今後のイベントについては、詳細が決まり次第順次お知らせしていきます。
冬には大阪でプレグループ展も・・・!?
服のアーティストによるワークショップ、
新進気鋭の小説家によるトークショー、
などなど・・・。
とにかくNAPから目が離せませんよ!!
そういうわけで、しつこく言いますが、

9月6日は予定を意地でも明けて、公開会議へお越しを!!


posted by 実行委員会 オオタ at 00:19| Comment(0) | 奈良アートプロムについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月10日

フライヤー配布ツアー 後編

どうもおはようございます、すずきです。

第一回のブログ執筆で、フライヤー配布ツアーの前編を書きました。
第2回フライヤー配りツアー

後編がまだだったので、この機会に書きます。

越後妻有トリエンナーレへ行く前に、
これまで感じたアートについてのことなどを交え
中村さんの興味深い記事を踏まえて、楽しく書きますよぉ


フライヤー配布ツアー 後編

「神様とアート 〜森の中でサプライズ〜」
「残すもの 生まれるもの」



☆☆「神様とアート」

あの日は梅雨だというのに真夏のように暑くて
あまりに暑いので、東大寺以降のルートは、南大門での休憩後
野村さん、中村ケイタロウさん、そして私の3人で配ることに

南大門の真下からの眺めは、中村さんのおすすめです
ビルの建築現場のような趣があります

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さて、暑さに負けず出発、奈良公園を通り、高畑(たかばたけ)へ

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(野生動物としての精悍さが残る鹿たち!)

そして、春日大社へと続く森を抜けて近道をします


☆☆☆

中村ケイタロウさんの記事を私なりに解釈すると

東へ行くほど神や仏の領域に近づき 
森羅万象の源に近づいてゆく

そして、神社へと続く森は人と神の世界をつなぐ場所の
そう、門のようなもので、そこは神秘の世界

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そんなところへ入ってきた男3人が


1. 奈良で現代アートのイベントを企画する男
2. 奈良に潜むオリエントの秘密をあばく男
3. 神聖な森で欲望の赴くままに写真をとる男


の組み合わせだったら、さすがに温和な神様も
神罰を下したくなったのだろうか

現代アートの布教者3人が、奈良公園の森で道に迷った!

出口があるはずの所にフェンスが立っていたら
どう考えても遭難したのだろう


都が遷りし後も、奈良を守護してきた神社仏閣
敬わないと神隠しに合うかもしれない

おぉ、遷都1300年の神隠し 

blue_bug.jpg

(瑠璃色の虫を見つけた!)

アートという言葉は、もとは「技術」という意味
装飾品も、もとは神に捧げるためのもの

それが今やアートがお膝元に居なくなり、神はお嘆きか?



☆☆☆☆「残すもの 生まれるもの」


アートは、それ自体の意味も価値も変わり
新しい価値を生む力を持つものとなった

フライヤー配りをしてゆく中で目にした
高畑やならまちの町並み、家の屋根瓦、路地、草花

昔から残されてきたもの、守られてきたものが
至る所にあり、それに慣れてくると当たり前になる

little_flower.jpg

(小さくてもよく見ると美しい花もある)


忘れ去られるもの 再び光の当たるもの

守られるもの 残されるもの


NAPの理念の一つ、古都奈良から新たな価値を生む

それは新しい価値を生む力のあるもの
残すべきものに光を当てることでもある


☆☆☆☆☆


とはいえ、こうして考えることができるのも
楽しんだり驚いたりできるからこそ
それができなければ、アートの祭典とは呼べない

それに、頭よりも目や手の方が物知りなことも多い


そんなこんなを踏まえて
越後妻有アートトリエンナーレに行ってきます
参考になることもいっぱいあるはず。
まずは楽しんできます!

。。。。。

え? アートに去られた神様の傷口に塩をぬって楽しんだ
私が一番の罰当たりだって? 
いやいやいや。。。。


すずき ぶんぺい

posted by 実行委員会 スズキ at 05:28| Comment(0) | 奈良アートプロムについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月09日

8/8:ミーティング & 燈火会

どうもこんばんは、鈴木です。

8/8(日)は13:00からGallery OUT of PLACEでミーティングを行い
ミーティング後はならまちの燈花会(とうかえ)に出かけました。
そのことについて、3つに分けて書きます。


☆ミーティングの議題☆

☆私からひとこと☆

☆燈火花



ーーーーーーーーーーーーー

☆ミーティングの議題☆ 

下に示す議題について話し合いました


*10月予定の展覧会について、メイン会場および個展会場の候補の確認と
会場あたりの展示数など、展示形式の検討

*第1回公開会議の内容、進行などの打ち合わせ

*プレイベントおよび展覧会の広報と予算についての対策

*フライヤー、ホームページ、名刺のデザインおよび内容について検討

*奈良アートプロムの関係者に対し、その内訳の明確化



ーーーーーーーー

☆私からひとこと☆

会議中と、会議後のおやつタイムで浮上したこと
ミーティングがスタッフメインのとき、作家はどうかかわればいいか?



奈良アートプロムが、作家にとって魅力的か

これはつねに問われるべきこと

そして、作家でなくてもある程度は分かるけれど

作家だからこそ言えること、説得力のあること

会議がそういうことの言いやすい場であれば

奈良アートプロムはこれからも良い方向に向かうはず



ーーーーーーーーーーー

☆燈火花☆



この日が蒸し暑かったのは、夕日のせい?

skytorch.jpg

燃える空が西の彼方に沈み

町に揺れる灯がともる


soul_light.jpg



音もなく咲く灯の花は

そっと彼岸に消えてゆく

何の想いも託さないのに

少し涼しく心地よい


light_flower.jpg


すずき ぶんぺい


posted by 実行委員会 スズキ at 21:34| Comment(0) | 奈良アートプロムについて | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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